前回までで90年代のリストラのはじまりまでのお話をしましたが、今回はその「リストラ」そのもののお話です。
「リストラ」という単語は、日本では社員の整理解雇、さらに拡大解釈では解雇そのものを表す単語として定着してしまった感がありますが。
リストラという単語の元となった「リストラクチャリング(Restructuring)」というのは一体何であるのかを見直してみましょう。
欧米式の経営で広まったこの単語は直訳をすると"再構築"を表しており、今回の場合、主語を加えると「事業の再構築」を表します。
元々企業の経営では、経営状態が悪化すると企業の中で利益のでない部門等を閉鎖、もしくは他社への売却などを行って事業の整理を行います。
不採算の部門の整理などを行う事によって、企業側の手元にはある程度の資金が出来るのでこれを使って自社が将来行う事業への設備投資などに投資を行います。
これを行うことによって始めて企業の経営状態は改善して、業績を伸ばした企業が雇用を再開し始める事が出来る様になります。
つまりリストラクチャリングとは
整理解雇→資金の余裕を作る→将来への再投資→経営の改善
の一連の流れを全て含んで始めてその言葉の意味を成すのですが、日本ではメディアなどの影響で整理解雇のみを表す単語として定着してしまいました。
しかしこの事業の再構成という単語を考えた場合、企業が業績を取り戻すためには人員整理のための解雇が必要だという理屈にも繋がります。
もし整理解雇を行わない場合、高止まりした人件費を抱えたまま経営者は当座の資金繰りに奔走して、事業の整理を行うことも出来ない。
そして不況時には金融機関も貸し渋りを行うので、新たに融資を受けることも難しい。
しかし、日本の法制度の下では解雇を行うことも難しい。
これらのジレンマの狭間から、『いざという時には解雇を出来る労働力が一定数必要である』という考えが、現在の正規/非正規雇用という2枚舌、ダブルスタンダードの労働制度の誕生に繋がるのです。
まぁ、実際はWikipediaの該当項目を読んだ方が話は早いんですけどね…
http://ja.wikipedia.org/wiki/リストラ
投稿者 baban
2009/01/10 at 11:36
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80年代を通じて日本に雇用慣行として定着した終身雇用制度ですが、90年代に入りバブル経済が崩壊するとともにその弊害が吹き出ることになります。
その原因は2つあり、一つ目が管理職の増えすぎ、二つ目が人件費の高止まりです。この二つは独立して存在するものでは無くてそれぞれが深く関連しあっているので合わせて解説していきましょう。
このそもそもの原因は、少子化による人口構成の変化があり、日本が経済成長を続けながら新入社員が次々と入社していた時代にはある年代になると年功序列的に上の役職に上がってゆくという制度は有効に働いていたのですが
戦後のベビーブームで生まれた世代が成人して、社会人になり、30代になって上の役職へ昇進する必要がある80年代頃から、下に付ける部下の存在しないという問題が顕在化します。
そのため、それに合わせて技術職の場合管理職に上げないで現場でキャリアアップできる制度などを設けて対処をしていたのですが、90年代に入ってバブルの崩壊とともに限界が訪れます。
元々年功序列的に給与が上がってゆく制度になっているため、上の世代の人間ほど給与が高い状態にある。
少子化の影響で下に付ける部下のいない。
しかし終身雇用制度を前提とした状況では簡単に解雇することも出来ない。
この相反する要求の中で企業もあえぎ苦しんで、しかし解決策の無いまま90年代も後半になると「リストラ」という形で、ある意味最悪の形で顕在化することになるのです。
投稿者 baban
2009/01/08 at 20:58
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一度正社員として受け入れた人間をそうそう解雇できなくなってきたのは、これらの判例が出た後のこと。
つまりは、現在の正社員制度と終身雇用制度の誕生は、70年代後半から80年代の最初の頃という事になります。
これらの正社員+終身雇用制度という形は、後のジャパン・アズ・ナンバーワンと称えられ、エコノミック・アニマルと揶揄された頃の、順調な経済的発展に支えられて存続、定着していくことになります。
こうして正社員制度と終身雇用制度の完成と共に、時代は80年代に移ります。
GNPはドイツを突破し、世界第2位の経済大国に上りつめ、不況であえぐアメリカ経済をよそに、躍進を続ける日本は海外勢を不安にさせ、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が世界中でベストセラーになる頃です。
官民協力やトータル・クオリティ・コントロール、系列システム等、評価された日本のシステムも多いですが、今回の話題で特に取り上げるのはやはり終身雇用制度ですから、これに焦点をあわせてお話をしましょう。
現在の終身雇用制度が70年代の裁判を通じて、社員を容易に解雇できないという理由から生まれたことは先ほどお話しましたが、ここから企業側は、定年まで居続ける事を前提とした社員の長期的な育成を企業の命題とします。
具体的には次の3点などです
社内研修制度の充溢
一度社員として受け入れた相手は定年まで社員として働いて貰う以上、社員の能力向上は企業として当然求めることです。
そのため、社員育成のための社内での研修制度を充溢させ、社員にそれに参加させることでキャリアに応じた能力を社員に与える事が出来ます。
この方法には隠れた利点が存在しており、研修を社内で内製化する事によりその会社の文化や業務内容あわせてカスタマイズされた研修を行うことが出来、逆に社員には転職をしないで社内に残る動機付けになります。
社員の経済的安定と年功序列の賃金制度
日本の正社員制度の中では、通常入社年数に応じて、役職と賃金が決定します。この年功序列の制度は社員の能力による評価を否定するという欠点を含んでもいますが、逆に利点も持っています。
一つ目が雇う側の理屈で、社員に払うべき給料を将来に後回しにするため、それを期待している社員を引き留められる効果があること。
2つ目が雇われる側の理屈で、新入社員として入社して、20代で結婚、その後に出産、子供の進学というライフプランに合わせて給料が上がってゆく将来設計のしやすさです。
特に正社員制度の上では終身雇用という経済的な安定があるため、より強固にこれが働きます。
他にも、会社の成長期には賃金を低く抑えられて、後に会社が成熟してからそれを払える、なんて利点も存在します。
比較的コレは分かりやすいですね。
企業都合のキャリアパスの選定
終身雇用制度の上では、社員は定年までその企業で働く事を通常目的にしますので、企業側からは社員の会社に対する忠誠心が厚い事を期待できます。
また、将来を保証する立場(皮肉を言うなら、社員の将来を質に入れている…)として社員に対して強い命令権を持ちます。
そのため、転勤等の比較的社員から嫌がられる命令も出すことが出来るという利点があります。
これらの制度は欠点ももちろん存在しますが、一度全体を見た上で、その根底にある精神を見ると
『会社は社員のために制度を整え、社員は会社のために尽くす、またそうあるべき!』
という方針で出来ており、基本的にはお互いに利益の存在する制度であると言えます。
投稿者 baban
2009/01/07 at 00:33
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最近社会問題化している、派遣社員とその首切りですが、この文章は、その問題点を一度整理しようと言う目的で書かれています。
正直な話、この文章は特に専門的な言葉を並べて議論を行うと言うよりは、現在に至るまでの経緯を誰でも分かる様に順序良くまとめてしまおうという試みの基に書かれています。
そのため、自分なりの結論も最終的にはありますが、それがこの文章を書いた目的では無く、自分でもそれが良いと断言している訳ではありません。
そういう問題に関しては他に詳しい方が2ちゃんねるの該当スレ等にいらっしゃると思いますのでそちらをご参照下さい。
派遣社員のお話を始めるためには、まず現在の日本の正社員と終身雇用制度のお話から始めないといけません。
何故ならそれが現在の派遣社員制度の浸透や、その間の格差等の根本的な原因となっているためです。
正社員と終身雇用制度の誕生
正社員と終身雇用制度のお話を始めるときに最初に言っておかないといけないことは、現在の終身雇用制度というのは日本に古来よりある伝統というわけではなく、比較的最近になって生まれて来た制度だと言う事です。
もともと戦前の日本社会は、今の様な終身雇用の制度というのは存在しておらず、働く者の給与はその技能に応じて手当が出る等の一定の優遇制度はありつつも、基本的には年齢に連動する様な年功序列的なモノではありませんでした。
これは戦後初期の日本社会でも引き継がれていていたのですが、この様な給与体系が後の終身雇用制度と変化していく原因となる出来事が70年代に起きます。これが、オイルショックです。
オイルショックが経済や文化に与えた影響は多いですが、ここでは置いておきます。
雇用生成の変化に変化を与えたものが、オイルショックによる経営悪化で解雇をされた人達の次々起こした裁判です。
70年代も後半になるとそれらの裁判の判決が『解雇は違法』という形で次々に出てきます。
これらの判例の積み重ねが決定的要因になって、一度正社員として受け入れた人間をそうそう解雇出来なくなっていくと、企業側は社員を長期的な観点で育成をしていこうという姿勢に変わっていきます。
つまり、日本の終身雇用制度は、形として整って、たかだか30年程度の歴史しか無いと言うことになります。
これが何故非正規雇用を誕生させて現在に繋がっているのかというのをこれから話していくのですが、書いてみると結構分量のあるモノになりましたので、次回に続かせていただきます。
投稿者 baban
2009/01/03 at 18:54
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新年、年明けめでたいことに、こんな発表です
あなたが選ぶ静止画M@D大賞2008 Webサイト公開!
今年も主催は八八組長。
いや、なんとなくやる気があるのは知っていましたけどね!
今年は歴代部門もやることが決まっているのが実は若干の特徴
静止画M@D10年の歴史にだいたい付いてきた(と思う)オールドタイプ的に、古い作品をたくさん入れて結果を補正できるようにしたいと思います。
というか、なんだかんだで静止画界隈も動画界隈程ではないですが、新陳代謝という単語に取り残された人達が一定割合を占めて悪く言えば高齢化、よく言えば落ち着いてきましたね。
問題は、ジャンルとしての静止画の衰退かな…。ソースとしてエロゲがよく使われるので、そちらでヒトを呼び込むような作品がないと難しいのですよね。リトバスだけでは埋め切れませんでしたという感じもします。
紅白があったのが昨年のポイントですが今年もやるかは微妙だからなぁ…
投稿者 baban
2009/01/01 at 00:13
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投稿者 baban
2008/12/31 at 00:35
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え~と。
更新が鈍っておりました大変申し訳ございません。こんな私でも忙しい時期というのはあったりもするものなので…。
まぁ、時間が取れ出すとまらまったり更新を再開したりするので、来年も細々とやりながらもよろしくお願いいたします。
ところで、タイトル通りそろそろM@D大賞のシーズンですね。
正直、まだ今年は誰もその準備とか主催とかの話を表立ってしていないので大丈夫かなと思ってしまいます。
私も来年は作品リストの復活くらいはやりたいなぁ…、去年も同じ事を言っていたかもしれませんがね…
投稿者 baban
2008/12/30 at 16:00
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大分発表が遅れましたが、メールでリクエストがありまして嬉しくて作成してしまいました♪
まだまだ、未完成部分もありますが今回は自動アップデートに対応させている…、はずなのでそれをアテにして下さい。
投稿者 baban
2008/12/11 at 14:12
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『こんなの全部はいるのか?』
とか言われそうですが…、出来ると幸せになれますよ♪ 多分金銭的じゃ無いところで。
広く重要な知識が、大変簡潔にまとめてある大変良いぺぇじ♪
投稿者 baban
2008/11/20 at 21:36
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おいおいSTLも全部使っていないでBoostライブラリでヒィヒィいっている私のせまっこい頭ではもう全使用が入りませんぜ!
今度のプログラミング言語C++第4版はさらに分厚い悪魔になりそうで怖い…。
投稿者 baban
2008/11/20 at 21:24
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