非正規雇用の憂鬱2
一度正社員として受け入れた人間をそうそう解雇できなくなってきたのは、これらの判例が出た後のこと。
つまりは、現在の正社員制度と終身雇用制度の誕生は、70年代後半から80年代の最初の頃という事になります。
これらの正社員+終身雇用制度という形は、後のジャパン・アズ・ナンバーワンと称えられ、エコノミック・アニマルと揶揄された頃の、順調な経済的発展に支えられて存続、定着していくことになります。
こうして正社員制度と終身雇用制度の完成と共に、時代は80年代に移ります。
GNPはドイツを突破し、世界第2位の経済大国に上りつめ、不況であえぐアメリカ経済をよそに、躍進を続ける日本は海外勢を不安にさせ、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が世界中でベストセラーになる頃です。
官民協力やトータル・クオリティ・コントロール、系列システム等、評価された日本のシステムも多いですが、今回の話題で特に取り上げるのはやはり終身雇用制度ですから、これに焦点をあわせてお話をしましょう。
現在の終身雇用制度が70年代の裁判を通じて、社員を容易に解雇できないという理由から生まれたことは先ほどお話しましたが、ここから企業側は、定年まで居続ける事を前提とした社員の長期的な育成を企業の命題とします。
具体的には次の3点などです
社内研修制度の充溢
一度社員として受け入れた相手は定年まで社員として働いて貰う以上、社員の能力向上は企業として当然求めることです。
そのため、社員育成のための社内での研修制度を充溢させ、社員にそれに参加させることでキャリアに応じた能力を社員に与える事が出来ます。
この方法には隠れた利点が存在しており、研修を社内で内製化する事によりその会社の文化や業務内容あわせてカスタマイズされた研修を行うことが出来、逆に社員には転職をしないで社内に残る動機付けになります。
社員の経済的安定と年功序列の賃金制度
日本の正社員制度の中では、通常入社年数に応じて、役職と賃金が決定します。この年功序列の制度は社員の能力による評価を否定するという欠点を含んでもいますが、逆に利点も持っています。
一つ目が雇う側の理屈で、社員に払うべき給料を将来に後回しにするため、それを期待している社員を引き留められる効果があること。
2つ目が雇われる側の理屈で、新入社員として入社して、20代で結婚、その後に出産、子供の進学というライフプランに合わせて給料が上がってゆく将来設計のしやすさです。
特に正社員制度の上では終身雇用という経済的な安定があるため、より強固にこれが働きます。
他にも、会社の成長期には賃金を低く抑えられて、後に会社が成熟してからそれを払える、なんて利点も存在します。
比較的コレは分かりやすいですね。
企業都合のキャリアパスの選定
終身雇用制度の上では、社員は定年までその企業で働く事を通常目的にしますので、企業側からは社員の会社に対する忠誠心が厚い事を期待できます。
また、将来を保証する立場(皮肉を言うなら、社員の将来を質に入れている…)として社員に対して強い命令権を持ちます。
そのため、転勤等の比較的社員から嫌がられる命令も出すことが出来るという利点があります。
これらの制度は欠点ももちろん存在しますが、一度全体を見た上で、その根底にある精神を見ると
『会社は社員のために制度を整え、社員は会社のために尽くす、またそうあるべき!』
という方針で出来ており、基本的にはお互いに利益の存在する制度であると言えます。
投稿者 baban 2009/01/07 at 00:33