キャズムを超えろ、窮鼠のFUD戦略

最近、というよりメガネのお姉さんがfirefoxを紹介するビデオを見ながら、なんとかしようとしている努力が何処か上滑りしている印象を受け続けているfirefoxですが


firefox1.0の公開あたりから口火を切った第2次ブラウザ戦争も、世界市場のブラウザシェアの変動がここ1年全く止まっているように

日本市場でのブラウザ市場も、ここ1年全くの"足踏み状態から動いていない"と言えます。


もちろん、ネットワーク効果を出すだけのマスユーザーを獲得完了して、じわじわと成果を上げている地域もあったりしますが、日本市場のシェアはおそらくまだまだ3%かそこら。アーリーアダプター層で内輪の争いをしていたりします。


日本に置いて特別にシェアが低い原因の一つは確かにSleipnirにもあります。OperaやSafariによりブラウザ市場の分断が行われて、アーリアダプタ層の間でのネットワーク効果は弱くなっている。

日本市場独特の強力なライバルが、他の国に比べて市場の分断を強めている、というのは事実ではあると思います。

しかしもっと大事なのは、雑魚同士で延々と喧嘩をしている場合ではなく、IEとの正面対決を結託してでも行うべきだ、ということなのです。

つまり、アーリアダプタ層という狭い市場でシェア争いをしている場合ではなく、その先にあるアーリーマジョリティにIEをやめさせる方法を考えるべきなのです


かつて、日本ではブラウザという市場自体が消え去っている、と言われました方がおりました(いや、今もおられますけど

それを言われたとき、私もおおいに大いに賛同した記憶があります。あの当時の状況を上手く語られておりました。

しかし、それから1年半状況はゆっくりと確実に変化してきています。

たとえば、平均的なパーソナルコンピュータの処理速度が向上した。

かつては「重いからMozilla使わない」がIEユーザーの決まり文句でしたが、現在の平均的なPCの処理性能を考えれば「Firefox重いと思っているのはよほどの時代遅れマシン」というのが的確な状態です。

(というか頭ひとつ進歩が遅れているIE(これはIE7も含む)を除けば、CSS2に完全対応しているOpera、Safari等の競争相手もすでにかなり重いものになっている。この点に関する独自性というのはすでに市場から消えてしまってきていると言えるのでしょう)

例えば、Web標準に対応しているサイトが当たり前になった

HTML原理主義者を体験してきた人なら涙ながらに頷いてくださるでしょうが、IEが支配的なシェアを獲得していた、そしてblogブームも全然、全く黎明期だった時期には

正しいHTMLを、CSSによるデザインを、そしてその道では「HTMLの合成着色料」といわれたfontタグを使わないサイト作成をという言葉に対して返ってくる

Web標準が標準なのではなく、IEが標準なのであって、IEにあわせてみなサイトを作る、という言葉と現実

IEにあわせてページを作るからfirefoxではデザイン崩れがおきる、そしてfirefoxではデザインが崩れるからIEを使うという動かない現実

しかし、firefoxが一定のシェアを獲得するようになって1年半程度。そう、たった1年半で状況は激変しました

IE以外のブラウザではデザインが崩れるという状況が恥となった、Web標準にあわせてサイトを作成する、という状況が、当たり前になった。いや、"常識"になった。


現在ではIEでしか表示できないサイトがあるからという言葉は絶滅し、「Gyao以外は全然困らない、そのときだけレンダリングエンジン切り替えて使っているぜ」という時代になりました

(逆を言えばGyaoの著作権保護機能付きのasfフォーマットが再生できるようになれば、Mozillaの不満な点は消えるのね…、誰か作る気ありませんか?)


つまりは、日本ではブラウザという市場自体が消え去っている、という言葉は「消え去っていた」つまりは過去形に直されるべき言葉になっていると感じるのです。


さて、ここまでを認めたとして、実際にアーリーマジョリティ層に対してブラウザの切り替えを行わせるにはどうすればよいのでしょう?

そう考えたときに、実際に行うべきマーケティング活動は3段階に分けることができるのです

  1. 切り替えさせ
  2. 視界にいれ
  3. 体験させる

(特に切り替えさせるというのは、特定の産業でのシェア争いを指すのではなく、広く代替の選択肢の事を指します。例えば「家計簿+電卓+ボールペン」から「Excel」等も含みます)

これをFirefoxに関して具体的に話すなら

  1. まず「IE以外のブラウザを…」という考えをおこさせて
  2. 次に、Firefoxという名前をアピールし
  3. 最後に、Firefoxをインストールして触ってもらう

という3段階の宣伝を、タイミングよく、機動的に行う必要があるのです。

そして、みな認める日本市場の特徴として、「IE以外の選択肢」という考え方が、世界でも特に低い。これを特に何とかしないといけない状態になっているのです。

これに関して有効な戦術というのはなかなか難しいのですが、ひとつ良いアイデアがあります

FUD戦略です

ある程度の満足度を持ってWebサーフィンを行っているアーリーマジョリティに対して必要なのは、優れた機能のアピールという差別化ではなく、IEの劣っているところを積極的に見せて代替の選択肢に目を向けさせるネガティブキャンペーンではないでしょうか?

これが浸透してきた段階でのFirefoxの大宣伝、ブランドイメージを付けたクールなfirefoxの宣伝、この2段階作戦を成功させることなのではないでしょうか?


バージョン7で方向の転換を行ったIEは、そのほかのモダンブラウザとの溝を埋めたとは言えず、ブラウザ未だ横並びならず

こういう状態の中で、今の状況を支えてきた、Firefoxの開発者コミニュティも「もういいかげん、これまでどおりだけではダメだ」という事実を認めるべき時期に来ているのではないか、と思います。

この話題のもうひとつの焦点なのでしょう


あっはっは、なんだか久しぶりの長文になりましたが、今日ふとあのダメなfirefox宣伝ビデオを思い出してしまって


何かがズレている、上滑りしてどこかへ飛んで言っている、アーリーアダプタしか見なさそうなところで、アーリーマジョリティよりもレイトマジョリティに向けて作られている映像を流して、しかも何かが上滑りしている。

こんな事やっている場合じゃないぞっ!

と思ったのでした。

投稿者 baban 2007/09/04 at 21:26

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